北極30えもん28 | biko先生のマネー奮闘記

北極30えもん28

「第三話 激烈!M&A合戦」その3


民放キー局第6位はつまりビリっけつということだ。売上はビッグ3と言われる日の丸テレビ、テレビ夕日、TTVの十分の一にも及ばない。第5位のテレビ関東すら雲の上の存在だ。つまり、民放のお荷物。認可官庁の郵便電波省からは、何度もお取り潰しの沙汰を受けているが首の皮一枚のところで何とかすり抜けてきた、というのがプティテレビの現状だ。
放送内容といえば放送権が格安の古いB級映画や、他局がマスターテープを破棄しようとした古いテレビドラマの再放送がメイン。ニュースは一応、夕方は7:00、夜は11:30からやっているが、何故か他局のニュースが終了した時間帯。これについてプティテレビは「競争性を高める為、時間をずらし、より新鮮なニュースを視聴者に提供したい」と説明するが、もしかして他局のニュースを見てニュースを流してるのでは?という疑惑は囁かれている。実際、プティテレビのニュースはアナウンサーが棒読みするだけで、映像というものを見た事が無い。
そんなプティテレビが唯一ドル箱とするのが深夜時間帯のアドルト番組だ。素っ裸の女子アナによるニュース&お天気から始まり、現場ルポと称したラブホ突撃取材、「経済最前線」という特集では風俗店の店舗再建、更に新作AV紹介など、てんこ盛りのメニューだ。営業的にも街のキャバクラから全国展開中のデリヘル、高級ホストクラブ、風俗労働者御用達のラーメン屋まで豊富なスポンサーを抱えている。
そんな深夜帯の中でも最大、最強の視聴率を誇るのが「トゥルコーのオーバーナイトヌッポン」だ。鶴原亀一郎という風俗ジャーナリストが司会を務めるバラエティ番組で、深夜12:30から3:30まで放送。但し、毎月第一金曜日は「朝まで生出し放送」と題し5:30まで放送している。
当然のことながら全国のPTAほか教育団体から抗議や改善要求が絶えないが、地方局が無いことやプティテレビの13チャンネルが映らないテレビが売り出されていることから「まあ、真面目に相手にしても仕方ないか」というところで見逃されているのが実態だ。
「そんなプティテレビに敵対的買収まで仕掛けて栗えもんは何を考えてるんですか?ヌッポン放送を買収してアダルトビデオ権を獲得したところで私ならプティテレビなんか捨てちゃうな!」
倫子が首を捻(ひね)った。すると微笑みながら西尻と顔を見合わせ水上が、右手の人差し指を立てたかと思うと左右に小さく振り
チッチッチッチ
と舌を鳴らした。
「倫ちゃんは若いから分からないのだ。トゥルコーのオーバーナイトヌッポンは、われわれオーバーフォーティーン世代には青春の思い出なのだよ」
「青春の思い出?」
倫子が問い返すと、水上と西尻は手を握り合ってノスタルジーの世界に入り込んでいた。