総集編6~10回 | biko先生のマネー奮闘記

総集編6~10回

★「第一話 バイブえもん登場!」その6
すっかり潜ってしまった。それも深海へ。ダイバーリーゼント社は底知れぬ会社だ。アパートに着く頃には倫子は心身ともに疲れ果てていた。
ダイバー社に向かう途中、そういえば女子社員はいないんだったか?と思った。細野課長に聞いてみると
「いますよお。やあね倫子さんったら。レズにでもおなり?」
おなりじゃねーよ!おならでも引っかけてやっか?と倫子は内心憤慨したが、
『女いたんだー???』
という方に思考が優先された。
行ってみると、た・し・か・に・いた。うさぎのきぐるみ、猫のきぐるみ、カンガルーやレッサーパンダなんかまでいる。カモノハシさんがお茶を運んできた。
「お茶でーす」
「はあ?ありがとうございます」
そこへ401Kを担当する昆布巻CFOが入ってきた。
「やあ、皆さんいらっしゃい」
すかさず細野課長が
「昆布巻CFO、すばらしい。『萌え』ですな」
とおべんちゃらを言った。
「OH Yeーs。よくお分かりですね。萌え、の市場は当社が独占しまーす。その為、社員全員が高次元な『萌え』を理解しなくてはいけませーん。その為の社員教育でもあるのでーす」
「さすがアメリカ帰りのMBA!」
「No!No!グローバリゼーションの現代にアメリカ帰りもMBAも関係ありまっせーん」
そんなやり取りの横で倫子は、
「社員教育ー?」
と口に出してしまった。
「Yeーs。女性社員は『萌え』を提供する側、男性社員はそれを享受する側の研修でーす」
ばか?馬鹿?BAKAなのこの連中?単なるコスプレじゃん!それもこの女どもは何?保母さんか?
「ねえ、北極30号。聞いてる?大変だったのよ」
「ええ分かりますよ倫子さん。お仕事というのは何時の時代も大変なものです」
「でもさあ、現代のお仕事って無意味に大変だよね。まだセクハラがどうのって言ってたバブルの頃の方が健全だったんじゃない?」
「さあてどうでしょう?時代時代にパラダイムというものがございますから、違う時代から来た私がとやかく言うことでは無いでしょう」
「パラダイスって言っても、あれはダイバー社の馬鹿社員どもにとっての楽園ってだけよ。現実逃避、生の女を満足させたことなんか無い連中だわ!」
「あの、申し上げにくいのですが、私が申し上げましたのはパラダイム、つまり『規範』のことです。まあ価値観といいますか、美意識とか正義感なんかも含まれましょうか」
「げげ!勿論、分かってたわよ。何しろ私ってば有名金融コンサルタント会社の金融プランナーなんだから。ちょっとした駄洒落(だじゃれ)よ!」
「申し訳ありませんでした」
「そんなことよりー。早くちて。ね」
「はいはい分かってます。でも夕食はよろしいのですか?」
「取り敢えずー。1ラウンド済ませてから。ね」
「えっと、それではどんなモードで」
「だから、ね・っ・ち・り・で」
「はい。それは予約済みなんですが、他にもいろいろ細かいモード設定がございます。まあ、まだ慣れてませんから全てノーマルでよろしいでしょう」
「ちょっと待った。それは【深・突】とかのことでしょ?」
「いいえ、そいうのはなされいる最中にご操作頂くものです」
「え?じゃ、他にあるの?」
「まあ、いろいろ」
「例えば?」
「射精機能も付いてます」
「ええ!?ほんと!?」
「はい。スイッチはここ。左肩の裏」
「ほんとだ。なになに?【熱・冷】?何これ?」
「ああ、射精する精液が熱い方がいいか冷たい方いいかってことです」
「それとーー、うん?【多・少】?フンーーー!!」
「精液の量が多いか少ないかです。お好みで」
「じゃあ、【多】でお願いちまちゅ。ポ!いやん恥ずかちい!」
「いいえ当社のお客様統計でも【熱】【多】の組み合わせを選択なされるお客様が全体の七割に上るという結果が出ています」
「そうだよね。私に言わせれば【冷】【少】なんてボタンいらないよ」
「まあ、色んな趣味趣向の方がいらっしゃいますし、顔射を好まれる方もいらっしゃいますから」
「なるほど!でもそれなら【少】は分かるけど【冷】はどうなのかな?」
「まあ【冷】と言っても人肌並ですから」
「へえ?じゃ、【熱】は?」
「40℃に設定してございます。丁度、温泉の温度でございます」
「はあー。温泉の暖かさがあそこの中にジワーっと広がって、まあ、桃源郷の心地良さ。うっとり」
「他にもですね」
「もういいわ。お話は結構。実践あるのみよ。さあ。さあさあさあ」
「じゃ、いきます」
「お願いちまちゅ」
「ちなみに、舌にも動作モードがございます」
「舌ってベロちゃんのこと」
「ええ、取り敢えず一番人気のある【遅・ローリング】でいきます」
ぺろんぺろんぺろんぺろんぺろんぺろん
あふん、あふふん、あふふふん、あふふふふん、あふふふふふん、あふふふふふふん
ぺろんぺろんぺろんぺろんぺろんぺろん
うん、ううん、うううん、ううううん、うううううん、ううううううん
ぺろんぺろんぺろんぺろんぺろんぺろん
お、おお、おおお、おおおお、おおおおお、おおおおおお
「ねえん、もう欲ちいよ」
「駄目ですよ。もう少し辛抱なさい。辛抱が多いほど実りも大きいのですよ」
「えー?ー?ー?」
ぺろんぺろんぺろんぺろんぺろんぺろん
「もう、堪忍して!限界!」
「仕方の無いお客様ですねえ。じゃ、先っぽだけ。亀の頭だけ入れて上げましょう」
ヌポッ。しーん。
「うごいてー」
「先っちょだけですよ」
すこすこすこすこすこすこすこ
あ、あ、あ、あ、あ、あ、あ、あ
「もうううう、奥までーーーー」
「お客様、もう少し辛抱なさらないと困ります」
「だめ、だめ、だめ、だめ、もう駄目なのー。ね、お願い」
ずぷーーーーー
あっップ、
ずずずずーっこん、ずずずずーっこん、ずずずずーっこん
あふっあふっあふっあふっあふっ
「ぱんぱん!」
ぱんぱんぱんぱんぱんぱんぱんぱんぱんぱん
たっぷり!
「はー、気持ちえかったー。ひさびさ、こんなに深く満足しちゃったの。でも、ねえあなた。ロボットのくせして焦らすなんてやるじゃない」
「まあ、そのようにプログラムされておりますから」
「プログラム?はあ、優秀な会社なのねえ」
「いいえ、このプログラムはあなたのご子孫様がなさったものです」
「げ!」
「お客様のことを良くお分かりなんですよ」
「ちょっと恥ずかしいわ。でも、なんで分かんの?」
「ご子孫様はいつもお客様のことを見ておいでです」
「いつもー?ちょっと!どういうこと?」
(つづく)
★「第一話 バイブえもん登場!」その7
「どういうことと言われましても大したことではございませんよ。未来から見ておるんであります」
「どうやって?」
「パソコンで」
「パソコン?」
「そういうソフトが売ってるんですよ」
「何それ?随分簡単に言うけどプライバシーの侵害じゃない」
「まあ、そう言えない事もありませんけど、一応、自分のご先祖様しか見てはいけないことになっています」
「えー!?じゃあ、私がオナニーしてるとこもいつも見てたってこと?」
「はい」
「はい、じゃないわよ。勘弁してよ。じゃ、今も見てるの?」
「そうですね」
と言うと北極30えもんは時計をちらりと見て
「見てませんね」
「え?何で?」
「もう、お休みになられています」
「お休み?」
「つまり寝ておられます」
「寝てる?まだ9時よ」
「未来人は早寝早起きなんです」
「へえ、じゃ起きてる時だけ見てる訳?」
「まあ、暇な時ですね」
「もう、いいや。やい子孫!ご先祖の痴態見てオナニーでもして寝てろ!」
まったくくだらない会話をしてしまった、と倫子は思った。くだらないと言えば昼間のダイバーリーゼント社でのくだらなさといったら。倫子は思わず目を瞑(つむ)って頭を横に振った。
「それでは昆布巻CFO様、そういう段取りでよろしくお願いします」
細野課長がそう話を締めた。倫子はこの馬鹿な空間からようやく帰れる、と胸を撫で下ろした。このオープンスペースにある応接にさっきから意味も無くダイバー社の社員が入れ替わり立ち代り行き来するのだ。みんなおかしな薄ら笑いを浮かべては通り過ぎていく。それも最初一人二人だったが、今は列を作って順番待ちの状態だ。
『何なの!?この人たち!』
今日のスーツはスカートの丈が短過ぎたか?
『変態どもめ!口説くことも出来ないくせに、人の脚見るな!!』
女は、上手に口説かれれば脚だろうが胸だろうが率先して見せたくなるが、覗かれるってのは不愉快なものだ。倫子が不快そうな顔をしてもお構いなし。倫子の前で、まるでコンビニで立ち読みする学生のように座り込む者まで出てきた。
そんなこんだでうんざりしているうち、契約話は順調に進んだのだ。さあこれで帰れる、と倫子が課長とともに立ち上がろうとすると、
「STOP!ちょっと待って。僕だけじゃ決められないんだった」
「と、申しますと?」
「CIOにも会って貰わないと。細かい説明はいいよ。挨拶だけしといて」
そう言って昆布巻はつかつか去って行った。
「CIOというのは初めてです。倫子さんあったことある?」
「いいえ」
倫子はそんなことより、このかぶりつきで自分の周りを囲む変態社員をなんとかして貰いたかった。課長は我関せずで、一向に気にしていない。さっきカモノハシのコスプレをした女が運んできた紅茶を啜(すす)って
「はあー」
とか一息付いてる。早く来ないか、倫子は一刻も早くCIOが来ないかと心待ちにした。
すると、
「Yes! Yes! Yes! Yes!」
「Oh!Baby Oh!Baby Oh!Baby Oh!Baby」
「Year! Year! Year! Year!」
「Hey you! Hey you! Hey you! Hey you! Hey you! Year!」
と訳の分からない英語の叫び声が聞こえてきた。歌なのかもしれない?さっきの昆布巻の野郎が更にハイテンションになって戻って来たか?
と思うとアフロヘアに白いラメのつなぎ、ゴーグル型のサングラスをした男が上半身を左右に揺すりながら歩いてきた。顔は顔黒だ。遠くから見るとオットセイがアフロヘアーの鬘(かつら)でも被(かぶ)って左右に頭を揺らしているように見える。そしてそのサングラスのふちにはネオンが埋め込まれ、パチンコ屋の看板のようにくるくるレンズの周りを回転していた。この糞熱いのにマフラーまでしてる。それも虹色のマフラー。
「Heーy、Hey、Hey、Heーy、Hey。Oh Fanky、Fanky、Fanky、Fanky」
腰を前後に激しく揺らしながら、握手を求めてきた。すかさず細野課長が
「お世話になります」
と卒ない握手。すると今度は倫子の方にその手を伸ばしてきた。倫子が握手しようとすると、突然大声で
「Oh!! Fack Fack Fack Fackyou I'm マンキー」
と叫びだした。どうやら興奮しているらしい。ウホッウホッと三、四回その場でジャンプした。倫子に飛び掛かってくるのか?というほどの興奮の仕方だ。突然、ジャンプが止まったかと思うと、手を握られ握手、上下にブンッブンッ握った腕を振られた。
「Yes! Nice Pussy Your Prity Pussy Cat Yes! Yes! Yes! Ho! I'm マンキー」
monkeyの発音が妙に気になった倫子だった。
男は素早く白いラメのつなぎの胸ポケットから名刺を出すと課長と倫子に渡した。そして
「thanks! you you you what your! mnnnnnn」
と言うと再び
「Yes! Yes! I No Anita!! Anita! Anita! Anita!」
とか歌いながら去って行った。名刺を見ると<CIO小林正夫>と書いてあった。
『死ぬまでやってろ!』
と倫子は心の中で叫んだ。
そうしてようやくダイバーリーゼント社から解放された。
(つづく)
★「第一話 バイブえもん登場!」その8
「ねえ、北極30えもん」
北極30えもんは倫子が食べた食器を洗いながら、答えた。
「なんでしょう?」
「あなたお料理すごく上手い上に片付けまでしてくれるのね」
「ええ、食器洗い機機能が付いてますので」
「え?何それ?手の先っぽから束子(たわし)が出て回転するとか?」
「いいえ、24世紀では手洗いが一番流行なんですよ」
「なるほど!え?でも手洗いじゃ、人間がやってもおんなじじゃない」
「そうですよ。優れたロボットは人間と同じ事をするんです」
「なるほどねー。じゃ、お掃除も」
「ええ、掃除機機能も付いてます」
「掃除機機能たってあんた。あんたがそこにある掃除機使って掃除したんでしょうに」
「まあそうです」
「いえいえ、ありがたい限りですよ。だらしない私としては」
「そう言って頂けると嬉しいです」
ちょうど北極30えもんは食器洗い~食器拭きが終わり、台所から戻ってきた。倫子は待ち構えたように北極30えもんの肩にしな垂れかかり、次いで膝の上にだっこまでしてしまった。
「ねえ~ん、そんなことよりなんか新しい機能ないのー?まだ内緒の奴あるんでしょ?」
「内緒なんて。そんなものはございません」
「ないのー。つまんないのーー」
「まあ、特に新しくもなく内緒という訳でも無いのですが」
そう言って北極30えもんはシャツをたくし上げ、臍(へそ)を出した。
「お臍(へそ)?」
「その縁のところをご覧下さい」
「ほほー。あ!何か書いてある!どれどれ、なになに?【短・中・長・超長】?」
倫子は北極30えもんの顔を見てにんまり笑った。
「分かった分かった。ひひひ。これってあれの長さでしょ。ねえ今何?【中】?」
「いいえ【長】でございます。ご子孫様がセットなされました」
「なりゅほど!道理で具合良くいいとこに当たりますわ。ほほほほ。でも【超長】ってどれくらいなの?」
「これはー、外人様でしょうか」
「なるへそ!外人のあそこなら【超長】でも完食できるわね」
「あと、弄(いじ)るのがお好きなお客様向けとなります」
「ほっほー。たしかに弄繰(いじく)り回すには長ければ長いほど楽しいかも」
「そうのようです」
「でも【短】とかって選ぶ人いるの?【中】はあそこが浅い人もいるから必要なんだろうけど」
「入り口に性感帯があるお客様がいらっしゃいます」
「あ!分かる分かる。でもそういう女って本当にいったことないわよ。入り口じゃあオナニーと変わんないもん。ぴりぴりって感じって言うの?やっぱ本格的に行くには奥でドーン、ドッカーンって感じになんないとね。うんうん」
「さすが倫子さんは色んなことをご存知ですね」
「そんな褒(ほ)められるようなことじゃ。何よろこんでんのよ私ったら。ところで太さはないの?」
「ございます、左側です」
「これね。うん?これはなあに?【大・高・先細】?」
「ああ、それは亀頭のタイプにございます」
「キトー?」
「ええ。【大】は全体に大きいのでございます。例えるなら大き目のゆで卵。【高】はカリ高。【先細】は先端が細く尖(とが)ってるということです」
「へえええええ。これって興味深々。ねえ。【大】って押してみて良い?」
「どうぞ」
「わわわわ!何これ?すっげー」
「お好みで色も」
「色?」
「はい。ここに」
「おお!あれ?ピンクなんてあるよ?」
「初物好きの熟女のお客様に人気です」
「初物。つまり童貞君ね」
「そうです」
「私はそこまで熟してる訳じゃないけど、ちょっとピンクにしてみていい?」
「どうぞ」
「ひえー。こんなどでかい亀頭がピンク色!なんかいやらしい」
「興奮されましたか?」
「ちょっと入れてみていい?」
倫子はパンティを脱いで、北極30えもんの上に跨(またが)った。
「なんかピンクの亀頭君が私の中に入っていくと思うと恥ずかしいわ」
「なんの抵抗も無く呑み込まれています」
「ああ、どんどん入っていっちゃう」
「そうでございますね」
「ああ、あふん!奥まで入っちゃった。出し入れしていい?」
「どうぞ」
ずずずずーーーっぷん
「あふん!亀頭が大きくて刺激が大き過ぎる。動いたらいっちゃう。でも動かないとおかしくなっちゃう。北極30えもん!なんとかして!」
「ローリング機能を使いましょう!」
「なにそれ?」
「21世紀のバイブにもあるでしょう。中で回転する奴ですよ」
「ああ、あれね。じゃ、早くお願い」
「はい」
ういん、ういいん、ういいいん、ういいいいん、ういいいいいん、ういいいいいいん
あっぱ、いっぷ、うっぷ、えっぷ、おっぷ
ぶわーん!!ばーん!!ばばばばーんんんんn!!!
「ふーふーふーふー。死ぬかと思った。あんまり気持ちよくて。ねえ、死んだ人いるでしょ。気持ち良すぎて。これはまずいわー。癖になるー」
「ご満足頂きありがとうございます。そろそろ終了の時間でございます」
「え?何それ終了って」
「営業時間は午後十一時までとなっております」
「え!?何それ?聞いてないよう。せっかく明日は土曜日で休みだからもう一回くらいやって、それから夜中に起きてむにゃむにゃしながらやって、朝寝起きにまだ目覚めてない身体のまま朝立ちしたのを入れようと思ったのにーー」
「未来人は早寝早起きにございます。あ、それとモーニングコールセックスはOKでございます。朝の営業時間は六時からでございますので、それ以降でございましたら朝立ちコール設定もございます」
「朝立ちコール?なんて魅力的な響き」
「好評にございます」
「じゃ、六時半に予約お願いしまーす!」
「承(うけたまわ)りました」
(つづく)
★「第一話 バイブえもん登場!」その9
「うう~ん」
ぺりょんくにょんぬっちゅっぺりょんくにょんぬっちゅっぺりょんくにょんぬっちゅっぺりょんくにょんぬっちゅっ
「あああああああ、、ああ」
ぺりょんくにょんぬっちゅっぺりょんくにょんぬっちゅっぺりょんくにょんぬっちゅっ
「んんんんん、むふっおおおん」
ぺりょんくにょんぬっちゅっぺりょんくにょんぬっちゅっぺりょん
「うおおお、うおーん、ほーーんん」
ぺりょんくにょんぬっちゅっぺりょんくにょんぬっちゅっ
「あっ!」
ぺにょん
「ふーっ」
爽やかな朝だった。
「モーニングセックスコールサービスって最高!誰が考えたの?」
「社のカスタマーリレーションシップセンターでございます」
「これほど顧客の要望に充実した回答を出せるなんて、あなたの会社って凄いわ!」
「光栄でございます」
「でもお料理、お掃除、お片付けまでセットになってるなんて至れり尽せりね。誰が考えたのかしら?バイブにお掃除までさせる機能を付けようなんて!」
「長い時間を掛けて進化してまいりましたから」
「はあー、未来人の英知の結晶よねあなた」
「それほどではございません」
「でもあれかー、24世紀っていえばもう何でも自動って感じでしょ?」
「自動?と申しますと?」
「貴方みたいなロボットがなんでもやってて人間は遊んでるだけ、って感じ?」
「とんでもございません。そうですね。そういう意味ではこの時代より自動化は後退しております」
「後退?」
「ええ、まず道路は歩くのが普通です。自動車はあまり走ってません」
「歩く?分かった!空港みたいに道路が動くんでしょう」
「いいえ。舗装された道路がほとんどありません。みんな土です」
「へ?なんで?まさか石油が枯渇して、エネルギー危機が!?」
「まあ、そういう心配もありましたが、一番は健康の為です」
「健康?」
「はい。歩くのが一番、健康に良いのです。特に精神面のですね。いらいらやストレスが収まります」
「へえ、なるほどね。今、問題の切れっるって奴も無くなるかな?」
「勿論でございます。そもそも人間も動物の一種族ですから、身体を動かすのが普通ですから」
「ははあ。なるほどね」
「あとエレベーターとエスカレーターもございません」
「え?じゃ、高いビルも健康の為に歩いて上るの?」
「勿論です」
「ひえー。死ぬよね」
「大腰筋が鍛えられるので、お腹が出ません」
「うんーー。なんとも言えないなー」
「自動ドアもありません」
「え?」
「腕を鍛えるためです」
「なんか24世紀ってスポーツジムみたいだね?」
「そうですね。鍛え上げた身体の人は尊敬されます」
「ふんー。じゃ、今より科学は遅れてるってこと?」
「まあ、不要なところには使わないということです」
「と言うとどいうところに使ってんの?」
「そうですね」
と北極30えもんは少し考え込み、
「私のような慰安用でしょうか?」
「じゃ、これから300年間の人間の科学は、バイブの進化のためにあったっていうこと?」
「そうとも言えます」
「う~ん。複雑ね」
「まあ、未来人は機械化が嫌い、ということもあります」
「機械化が嫌い?」
「自然派志向なのですよ」
倫子は納得できるようなできないような、まあ、それほど深く考える必用が無いような気がしたので、取り敢えず話を打ち切り、北極30えもんの膝の上に乗った。
「ねえーん。今日お休みなんだー。まだ、八時だよ。もう一眠りちたい」
「お休みですか。どうぞごゆっくり」
「あーん。一つ教えて欲しいんだけど、例えば今から一時間後にまたモーニングセックちゅコールって出来ますー?」
「それは出来ません。朝だけのサービスでございます」
「やっぱり。がっくりだわー」
「しかし、代わりに『お昼ねコール』というものがございます」
「ふふーんん!!それはもしや」
「お昼寝中のお客様をお約束の時間にセックスで起こして差し上げるサービスでございます」
「そのサービス乗った!あ!?でも『お昼ね』って言うからにはお昼じゃないと駄目なんじゃ?」
「このサービスは時間の不規則な方用に考案されたサービスでございますから、朝八時半より夕方四時半までご利用頂けます」
「ありがとう北極30えもん!それじゃ、えっと9時にお願い」
「お承(うけたまわ)りました」
倫子は期待にどきどきしたが、より良いセックスの為に、より深く眠るよう努力した。
『こういう時、日頃寝不足で良かったわー。簡単に眠れるもの。ああ、でもより深く眠るために全身の力を抜いて、腹式呼吸、ゆっくりと鼻から吸ってー、はい口からゆっくりと吐いてーーー、最後に肛門をキュッと締めて息を全部吐き出すー』
などと考えている間に睡魔に襲われ、結局2回ばかり腹式呼吸しただけで寝入ってしまった。
(つづく)
★「第一話 バイブえもん登場!」その10
とんとんとんとんとんとんとんとんとんとんとんとん
「いやんんんん、北極30えもんったらー。いきなりとんとん奥を付くなんてー」
とんとんとんとんとんとんとんとんとんとん
「あん、あふん、そこ、そこが私のスポットなのー」
とんとんとんとん
「って、突いて無いじゃん!?」
倫子がベッドから跳ね起きると、北極30えもんの姿は無かった。どうやら台所にいるらしい。
「ねえ、ちょっと。何やってんの?とんとんって」
「あ、お目覚めですか?」
「お目覚めですかじゃないわよ!『お昼ねコール』はどうなったの?」
「あんまりよくお休みだったもので、起こすのが憚(はば)られまして」
「寝込みを襲ってもらうために寝てたんでしょうが!っん、もう!」
「申し訳ありません」
「ところで何やってたのよん?」
「遅い朝食を、というかもうじきお昼なので、朝食兼昼食を作ろうかと」
「へえ。気が利くねえ未来のバイブは」
「光栄でございます」
倫子は機嫌が悪かった。悪い理由は簡単だった。セックスが出来なかったからだ、けではない。
今日明日の土日、本来なら休日であるが明日の日曜日は一日研修セミナーに出席しなければならない。最近は世の中の仕組みがいろいろ変わるので、もう年がら年中セミナー漬け。明日のセミナーに出席する際に前回セミナーの内容をまとめたレポートを提出しろと言われている。
「ああ、もう面倒くさーい。せっかくまるまる二日間北極30えもんをたっぷり楽しんでやろうと思ってたのに」
「そんなにセックスばっかりしてたら馬鹿になられてしまいますよ」
「いいのよ!少し馬鹿になるくらいでちょうどいいの!普段頭ばっか使って生きてんだから!」
そう言って北極30えもんを叱ってから
「だからーん。カラダも使わないとバランスが取れないのよん」
と言って台所で料理する北極30えもんにしな垂れかかった。
「まあ落ち着いて。お食事をしてからにしましょう」
「いや!」
「冷めちゃいますよ」
「いいよーだ。普段一人暮らしで冷め切ったコンビニ弁当食べるの慣れてますから」
「エリートOLの倫子さんがコンビニ弁当?」
「そんなもんよ。会社がエリートってだけ。ペイ・フォー・パフォーマンス成果主義給与制度って聞こえはいいけど要は安い給料で死ぬまで働かせる口実だもの」
「そうなんですか」
「そうなのよ。だからダッコ」
「仕方ないですねえ」
北極30えもんがそう言ってくれたので、倫子はぴょんと飛び乗るようにして北極30えもんに抱っこした。
「ベッドまで連れてってーん」
「承りました」
ねっとりこん、ぺろりんぺろりんぺろりんぺろりん
もみもみもみもみもみもみ
くにゅんくにゅんくにゅんくにゅん
つつつーっ
「ぷはっ、はは早くー30えもーん」
先っちょ
こすこすこすこす
「ああああ、もう堪忍、、、」
ずっぷんずっぷんずっぷんずっぷん
「ううううう、、ぱんぱん」
ぱぱぱぱぱぱぱぱぱぱぱ
すっきり、ぐーーーー。
「うふ、また寝ちゃった。二度寝どころか三度寝だわ」
「もうお昼でございます」
「ひゅー。午前中ほとんど寝てた」
「そうでございます」
「でも有意義な午前中。やって寝てやって寝て。これ一日中、ううん二日間ずっとこれがいい」
「御意(ぎょい)に」
「やったー!」
(つづく)