biko先生のマネー奮闘記

一家に一台。一人暮らしの女性の必需品。   夢の北極30えもん!!


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Re:水虫が治る抗菌スプレー?

ドッグマンXさんに紹介してもらったスプレーですが、

(これ↓)
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お風呂場のカビ取りに効くタイプもあるって聞きましたけど、またサンプル頂けます~?


このブログ読んでる方もいかが?
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北極30えもん34

「第三話 激烈!M&A合戦」その9
「倫子ちゃ~ん!どうなった?栗えもんの件?」
「え?」
水上社長とハードジャンクインベスターズの西尻社長が雁首揃えて倫子に迫ってきた。ここのところ毎日、西尻は水上の社長室に入り浸っているようだ。二人で栗えもん対策をあれやこれやと相談しているらしい。よく見ると水上も西尻も顔色が青く、目の下に隈が出来、やつれている。もしや社長室に泊まったのか?そういえば男の饐(す)えた臭いが漂ってくるようだった。
「いっそ殺し屋でも雇ってしまおうか」
視線の定まらない西尻がそう呟いた。よく見ると瞳孔まで開いていしまっている。
「やめて下さいよ西尻さん。大昔の商社の売り込み合戦やゼネコンの談合工作じゃないんだから。たかだか株のやり取りで殺しなんて、笑われますよ」
と倫子が言うと
「そうだね。僕達の仕事はマネーゲームだもの、またチャラにしてやり直せばいい。ははは、ひひひひひひひひひ」
ネクタイは緩み、髪も乱れ、目は血走っていた。既に狂気が宿っているのは明白だった。その狂気の表情を突然強張らせ、西尻は倫子に懇願した。
「倫子さん。栗えもんにもそう言ってよ。あいつ本気なんだよ。本気で僕を潰そうとしてる。これはゲームなのに。ルール違反だよね。だってゲームなんだからゲーム版の中でしかやっちゃいけないんだよ。それをあいつ。ママに言いつけてやる。先生にも告げ口しちゃうぞ。栗えもんめ。栗野郎!もう、許さないんだから!こいつ!こいつ!こいつー!」
「やめろ!西尻!」
水上社長が叫び、壁に向かって頭突きを繰り返す西尻を頭から押さえ込んだ。既に西尻の額は割れ、トマトジュースを溢したように顔の表面に血が流れ出している。
「あっはーー!ひいいいいーーーー。栗えもんがーー、栗の奴が僕の大事な頭をーーー!!僕の東大より優秀な大学に行く頭を切ったーああああ!!」
もはやこいつは終わった。と倫子は思った。こいつらはゲームには強いものの現実世界ではからきし駄目なのだ。以前、ハードジャンク社のコレクターと言われる受付嬢から水上は大鮪(おおまぐろ)だと聞いたことがある。
「もう、寝てるんかと思っちゃったら、あそこだけぴんぴんしてるの。で、仰向けになったまま起きようとしないから上に乗ったら一擦りでドビャーっ。せめて舐めていかせてもらおうと思ったのに『気持ち悪い』だって失礼しちゃうわ!」
とファイストフード店で同僚の女子社員達に向かってコメントしていたのを憶えている。
それにしても西尻の言った「本気で潰す?」とはどういうことか?栗えもんも西尻と同種の人間の筈だから、マネーゲームの世界以外では何も出来ない筈だが。
「乙姫羅々子だ」
囁くように水上が言った。
「遂に闇の西太后が表舞台に現れたのだ」
乙姫羅々子。バイブモア社の西太后。黒衣好きの彼女にはダースベイダーのテーマソングが良く似合う。業界関係者は、栗えもんなど乙姫の操り人形に過ぎないことを知っている。身長170センチ、体重120キロ。栗えもんなど軽く覆い尽くすその巨体が、バイブモア影の支配者の底知れぬ実力を物語っているのだ。
「あああーー!!西太后!ゆるじでーーー!!」
壁の隅に座り込み、西尻はピクピクと身体を震わせた。しばらくの後、動かなくなった。口からは泡を噴き、目をカッと見開いて、髪は点に向かってつっ立ち、恐怖の表情のまま硬直していた。
「死んだか?」
水上が呟いた。
「いえ、いくらなんでも。気絶してるだけですよ。救急車呼びます?」
「いや、いい。こんな根性無し、このまま捨てておけば自分でどこかへ逃げ帰るだろう。おお!そうだ!田舎へ逃げ帰ればいいんだ、こんな奴」
水上が西尻の頭を靴の裏で蹴った。硬直した西尻は、石膏で出来た彫像のように形を崩さずそのまま横倒しに倒れた。
「倫子。どうしたもんかのーーー」
水上が昔のヤクザ映画シリーズで見た広島ヤクザの口調になった。
「やるか、やられるかじゃのー。仁義は無用の戦じゃ」
「乙姫のタマ、わしに取らせてくんさい」
「おお、頼もしいの倫。だがな、乙姫はおなごじゃ。玉はないんじゃ」
「穴ですな」
「穴は取るもんじゃ無く、入れるもんじゃ」
「たしかに!」
さすが水上社長だと倫子は感心した。倫子は、う~んっと悩んだ後、ポンッと手を叩き
「兄貴、いい手がありやす」
と目を輝かせた。
「相棒に任せてくんさい」
「相棒?ってーと、先日連れてきた二枚目の兄さんかい?」
倫子はこくりと大きく頷(うなず)くと、
「万事お任せを!」
と自信に満ちた表情で胸に手を当てた。水上はその勢いに気圧(けお)されたのか
「お、おおおうおう」
と曖昧な返事をした。が、それが為に主導権は完全に倫子に渡っていた。
「乙姫に一泡吹かせてやりましょう!」
倫子は、不安げな表情をする水上の肩をニッコリしながらニ・三度ポンポンっと叩いた。
(つづく)

北極30えもん33

ご声援ありがとう!なんとか復活!


「第三話 激烈!M&A合戦」その8
真夜中だと言うのに、倫子はオナニーを始めた。思えば久しぶりである。ストレスの溜まる職業柄のせいか、アパートで一人になるとオナニー三昧だった。それは恋人やセックスもする男友達が居る時期も同じで、彼らとのセックスだけではストレス解消には全く不足だったのだ。それが、北極30えもんが来てからというもの、どうやら心身ともに満たされていたらしい。オナニーのことなどすっかり忘れていた。
指を使いながら倫子はとめどなく涙が零れた。何度もしゃくりあげながら、それでも指の動きを止めなかったのは、このまま頂点を迎えられなければ一生、北極30えもんのことを忘れられなくなってしまいそうだったからだ。
どんな男と別れようとオナニーは別物。とてつもなく嫌な別れ方をした時でも、オナニーをしていった後は思わず笑みがこぼれたものだ。だから今日も自分の指で気持ち良くならなければいけない。それでさっぱり北極30えもんとの思い出が消えるに違いない。
こすこすこすこすこすこすこすこすこすこすこすこすこすこすこすこす
ぐにゅぐにゅぐにゅぐにゅぐにゅぐにゅぐにゅぐにゅぐにゅぐにゅ
『駄目だ!』
擦ったり、捏ねたり、色んな工夫をしてみたり、様々な淫らな場面を思い出してみたりした。以前、付き合っていた男性と行ったラブホテルで見た白人達の乱交パーティーのアダルトビデオまで思い出したりしてみたが、一向に粘膜は湿ってこなかった。
それもその筈。甘い気分になれないのだ。いいや本当は違う。北極30えもんとの抱擁を思い出しそうになると、一気に心が熔け始め粘膜も粘り始める。しかし、それでは元も子もない。慌てて首を左右に振り、脳内に浮かぶ北極30えもんの優しい笑顔を振り払った。
小一時間もそんなことを繰り返し、その間にテレビで何かエロチックな番組をやってないかしら、とか雑誌にエッチな話題が載ってなかったか、など部屋の明かりを何度か付けたり消したりして快楽のネタを探し回ったが、こういう時に限って見つからないものだった。
そろそろあそこもヒリヒリし始めた。倫子は絶望の淵に立たされた者のように、意思を失った目で呆然と宙を見つめ、指の動きを止めた。もはや涙も出なかった。このまま永遠に快楽とは無縁の人生を送るような予感さえした。窓の外に目を向けると、真っ黒な闇のしじまにビル群の明かりだけが煌々と輝いていた。
どれだけそうして眺めていただろう、徐々にしじまが破られ、街の呼吸が僅(わず)かずつ聞こえ始めた。明かりが薄ぼんやりとぼやけ出し、それとともに真っ暗な空が青みを帯びてきた。青みの中に黒や灰色の絵の具を落としたような色は、暗闇の中に隠れていた雲達らしい。その雲の色が白み始めた頃、空の青さは一層くっきりとし、既にしじまなどというものは遥か彼方に消し飛ぶ。
何時の間にか朝になったのだ。時計を見るとあと数分で5時になる。いつもならあともう一時間は熟睡しているところだったが、今日はもう眠る気にはなれないし、目を瞑っても眠りに入ることは出来ないだろう。

それから何日が経ったのだろう?死霊のように魂の抜け落ちた身体で過ごした数日は、何十年もの時を経たようでもあり、またまだ一日くらいしか経っていないような気もした。いずれにせよ何度かの夜が訪れ、その度に永遠の闇に支配されたかと思ったのだが、それも束の間、また太陽が間抜けなまでの陽気な顔で光を降り注いだ。そんな日々が繰り返され、いつしか倫子が期待した通り、記憶が風化し始めた。

いつからか倫子は早起きになっていた。その日も、まだ六時までは幾らか時間があるというのに倫子はベッドから腰を上げ、シャワー室に向かった。少し早いがシャワーを浴びて出勤する準備を始めよう、と思った。姿見に映った自分の姿を見る。そこには妙に醒めた自分の自分がいた。
「もう大丈夫ね倫子。また一つ終わっただけ」
と鏡の中の自分に声を掛けてみた。するとそこに映った自分が微笑み返してきたように見えた。
シャワー室に入り、いつもと変わらない手際の良さで身体を洗う。もともと倫子は出来る女。美人でエリートなのだ。すっかり身体を洗い、髪も洗い終わるとシャワー室の扉のすぐ際に置いたバスタオルを取った。髪をほぐすように拭い、ついで身体を拭いた。いつも変わらぬ手順である。そうしているうち台所から
とんとん
という俎板の上で包丁を使う音が聞こえて来た。以前、北極が居た時に毎朝聞いた音である。
とんとん とんとん とんとん とんとん
北極30えもんが居なくなって今、そんな小気味良い音ももはや聞かれない。
とんとん とんとん とんとん とんとん
ん?
ってこれは何の音?と倫子は脱衣場から台所に走った。アパートだから二・三歩進めば見えるのだが、倫子にはその二・三歩がとてつもなく遠かった。遠いと言うより、海の中を行くように身体が重く、どれだけもがいたらそこまで辿り着けるのか想像も出来ないほどだった。何度も何度も手足をばたつかせ、海の水のように重い空気を掻き分けてそこまで辿り着くと、そこには変わらぬ時間が待っていた。
「ああ、倫子さん。おはようございます。今日はお早いですね」
一瞬、その北極の姿は幻のように倫子の瞳の中で溶け出し、胡散霧散しそうになったが、倫子は持てる全ての力を振り絞ってそんな北極の姿をもう一度繋ぎ合わせた。それは超能力だったのかもしれない。
「どうしたんですか倫子さん」
北極は泣きじゃくりながら抱きつく倫子を見て驚いた様子だった。
「ほんとに、ほんとに居るのね。本当に帰ってきてくれたのね!」
倫子は叫びながら北極の胸といい胴といい、身体のそこかしこをその存在を確かめるように、ぎゅうぎゅうと抱き締めた。
「苦しいですよ倫子さん。帰ってきたって故障を直しに未来に帰ってただけじゃないですか」
と北極が笑った。
「ちゃんと言っていきなさいよー!心配しちゃったじゃない!!」
「え?言いましたよ。ああ、シャワーを浴びてて聞こえなかったのかな?」
倫子は北極の首にしがみ付き、唇といい舌といい頬といい辺り構わず吸い付いた。北極はひーひー言って逃げ回ったが倫子は許さない。
「いい?罰として今晩セックス三昧よ!」
と言って倫子は北極のあばら骨が折れるほど胴体を抱き締めた。
(つづく)

北極30えもん32

「第三話 激烈!M&A合戦」その7
『○えもーーんん。ぼく、もう悪いことしないよ。それからもう君に頼らない。いじめっ子のパイヤンにだって自分一人で立ち向かう。だから、帰らないでーーーーーーー』
『ご免ね。倫太くん。どうしてももう帰らなくちゃいけないんだ』
『なんで?どうして?What?Hou Much?』
『お金では解決出来ないんだよ』
『なんで帰っちゃうのーーー?』
『それはね』
『それは?』
『君が法律を破ったからなんだよーーーーーーーーーーーーーーーーーー』
ああああああああああああああああああああああああああああああああああっっっ
悪い夢から目覚める時はいつも、時空の果てに転落する光景を見るものだ。そんなラストシーンの後、現実は蘇る。
倫子が目を醒ました時、まだ空は漆黒の闇のごとく無を湛えるような色に染まっていた。そのすぐ下は眠りを知らない都市の明かりが煌々とした輝きを、誰に遠慮することも無く四方八方に放射し続けている。そんな無遠慮な光もブラックホールのごとき天空の底までは届かないらしく、照らしても照らしても無限に明かりは吸収され尽くされてしまうかのようだ。倫子はカーテンを開けたままの窓から、そんな空を眺めていた。
無用心と言われても倫子はずっとカーテンを開けたまま眠るのが趣味なのだ。物心付いた頃から必ずベッドは窓際に置き、カーテンを開け、空を眺めながら眠った。晴れの日は星を数えながら、雨の日はその漆黒の向こうの世界をあれこれ想像しながら眠りについたものだ。それは大人になった今も変わらない。そんな習慣が、北極30えもんと巡り合わせてくれたのかもしれない。倫子にとって夜の窓は、不思議な世界の入り口だったのに違いない。そこから北極30えもんが現れたのは、偶然ではなく必然だったのかもしれない。
ベッドで上体を起こし、辺りを見回す。眠りの中ですっかり闇に慣れていた目は、真っ暗な部屋の中を良く見回せた。やはりいない。いないのだ。
昨日の一件からしばらくの後、それは夜、社からこのアパートに着いた時である。北極30えもんは姿を消した。あまりに唐突な消え方なのでふざけているのかと思ったが、何度呼んでも返事は返ってこない。寝る時間になっても帰っては来なかった。思えば
「時空保護法」
という葉を口に下途端、突然元気が無くなり何を聞いても上の空で、社を出てアパートに帰る電車の中でも一人ぶつぶつ念仏を唱えるような独り言を言っていた。そしてアパートに着くや
「お世話になりました」
と一言言うと突然、姿を消した。トイレに入っていた倫子が居間に来た時は既に彼の姿は無く、ただ窓が開け放たれ外から吹き込む風にカーテンが波打っていた。どうやら「時空保護法」という法律が原因らしい。
倫子は、そんなSFチックな名前の法律が未来には本当に出来るのだろうか?と首を傾げた。ファイナンシャル・コンサルタントという、毎日がお金まみれの生活をしている倫子には、そんな未来のことなど想像したこともなかった。そんな未来どころか、夢のような未来も、恐るべき未来も、どんな未来も、未来という未来の何もかもを想像したことも無かった。ファイナンシャル・コンサルタントという職業柄だからだろうか?それとも時代がそうさせるのか?良くも悪くも今この時、この瞬間を如何に生きるか。いや「生きるか」などという哲学的な考えすらこれぽっちも無い。ただ、目の前にある瞬間瞬間でどれだけ勝ち続けるか、ただそれだけで生きてきたようなものだ。そんな倫子の価値観からすれば、北極30えもんの未来に関する知識を仕事に利用することなど至極当然のことではないか。しかし、北極30えもんの、いや北極30えもんを創った未来人たちの価値観は別のところにあるらしい。
『あーあ。北極との薔薇色の未来を思い描いていたのに』
と倫子は溜息を付いた。
倫子の計画では、北極30えもんの未来の知識を利用、いや北極30えもんの価値観からすると悪用して、大儲け→一生掛かっても使え切れないだけの金を溜める→どこか南国へでも二人で移住して毎日ゴルフ三昧、カジノ三昧→つまり一生遊んで暮らそう、とまで考えていた。すべての計画がパーだ。
それも「時空保護法」という訳の分からない法律なんぞを律儀に北極が守ろうとするからである。女は自分の幸せより社会のルールを優先する男は大嫌いである。自分の為に法律を破ってくれる位の男でなきゃ付き合っても損なだけだ。
『しかし』
と倫子は考えた。
『損でもいいから北極ーーーっ、帰ってきてよーーーー!!』
倫子は泣いていた。
(つづく)

北極30えもん31

「第三話 激烈!M&A合戦」その6
『ボロ儲けだわ!』
思わず倫子は北極の首にしがみつき頬に濃厚な接吻をしていた。それはキスなどという生半可なものではない。北極の頬肉がズルズルっと倫子の口中に吸い込まれ顔の皮全体が引っ張られるような吸引力の強い、まさにセップンという接吻だった。
「ああ!倫子さん、ずるーい!」
女子社員どもが騒いだが倫子は気にしない。このまま廊下に北極を押し倒し激しく騎乗位で責めちゃおうかしら、とさえ思った。その思考は動物のマーキング行動と同じものだ。北極は誰にも渡さない、と周りの雌に宣言したようなものだ。
なにしろ北極はこれから起きることを全て知っている。と、いうことは北極の知識を元にすれば全て相手の裏を掻くことも可能だ。そうなれば社長に認められて役員昇格も夢じゃない!バカバカ倫子!いつまで人の為に働くつもり!北極の知識があれば、あなた独立して起業すべきだわ。そう、私が社長になって社員をこき使えばいい。給料なんか生かさず殺さず程度にあげて一人ぼろ儲け!できれば若いスポーツマンタイプの男を社長付けにして身の回りの世話をさせたいわ。朝から晩まで、頭の上からつま先まで、それこそ舐めるように奉仕させて、まさに社長漬け!ほほほほほほほほほほほほほほ
「倫子さん。どうしました?何か良からぬことでもお考えでは」
「何言ってるの北極!良からぬどころか、良かる、いえ、よがる?まあ、良い考えが浮かんだのよ」
「はあ?」
北極30えもんは珍しく困ったような顔をした。
『北極は幸せの青い鳥だわ。セックスばかりじゃなく、仕事の成功も齎(もたら)してくれる。あら!セックスも性交、仕事も成功。なんて奇遇なの!』
などと倫子は勝手に考えていた。
「ねえ北極。あなた、私の命令はなんでも聞くのよね」
「そのようにプログラムされています」
「じゃ、さっきのお話、もっと詳しく聞かせて!」
「駄目です」
「ええ!?なんで」
「駄目なんです」
「あなた!私の言うこと聞くんでしょ。つまり、私の使用人、私の奴隷、私のロボット」
「法律違反は出来ません」
「へ?」
「倫子さんは多分、私から未来の話しを聞いて未来を変えようとしているでしょう」
図星だった。
「でも、それは法律違反なんです。未来ではね。時空保護法というのがありましてね。未来人は過去に影響を与えてはいけないんですよ。この時代のSF小説にもそういうのよく出てくるでしょう?未来では本当にそういう法律が出来るんですよ」
「やっぱり未来が変わっちゃうから?」
「そうです」
倫子は打ちひしがれた。せっかく良いことを思い付き、薔薇色の未来を思い描いていたというのに。社長の座も、ぼろ儲けも、社長漬けの社長付けも幻に終わる。
「そんなの嫌!じゃ、なんであんたはここにいるの?それ自体がおかしいじゃない。あんたがここにいることで、今という過去が変わるでしょ!」
倫子がそう叫ぶと、北極30えもんは悲しそうな顔で倫子を見た。そして一つ溜息を付くと、倫子から目を逸らし、窓の外の風景を眺めながら口を開いた。
「それは違います」
「どこが違うって言うの!」
「倫子さん、冷静になってよく思い出してみて下さい。私が何者なのか」
「ええ?」
「私は、単なるバイブです。つまり、オナニーの道具」
「そっそっそっ、それがどうしたっていうの?オナニーくらいしたっていいじゃない」
「つまり、あなたの一人遊びの為の道具です」
「?」
「他の誰とも交わらない。貴方だけの世界の道具」
「でも、あんた今、現にここにいるじゃない。この会社に!」
「それは倫子さんが望んだからです。これもあなたの欲望の延長」
「でも、他の女子社員が!」
「皆、すぐに忘れます。私はそのように出来ています。記憶に残り難いようにね」
「え?」
「ちなみに時空保護法では、こういう場合、もう一つ決まりがあります」
「何!?まさか?」
「ご主人様が悪しきことに利用しそうになったら、即座に未来に帰る、ということです」
「ええーーー!!やっぱり!」
「さようなら倫子さん。大切にしてくれてありがとう」
「ええーーー!!北極ーーーー。イヤーーー!!」
(つづく)

北極30えもん30

「第三話 激烈!M&A合戦」その5
「ねえ、どう思う?」
「どうとおっしゃいますと?」
倫子と北極は社長室から自分達のオフィスに戻るところだった。廊下には目をハートマークにした女子社員どもが携帯電話片手に待ち構えていた。
「北極さんアドレスを・・・」
ばーーん!
北極に話し掛けようとした女子社員の一人を倫子がぶっとばした。北極の電話番号かメルアドを聞き出そうという不逞の輩だ。
「あーれー」
という声がした。一人吹き飛ばし二人投げ飛ばし三人どつきながら倫子はオフィスに突き進んだ。
「社長の話よ」
「ああ、さっきの話ですか。あれはですね。結局、外資リャーメンシスターズ投資顧問の一人勝ちに終わります」
「ええ!?何で分かるの?もしかして頭脳はスーパーコンピューター?」
「いえ、一応この時代のスパコンよりは性能いいです。それと、未来から来たもので、その程度の歴史はインプットされております」
「ああ、そうか!北極は未来から来たんだもんね。それにしても何でリャーメンシスターズの一人勝ちなの?」
「実は、水上社長と栗えもんさんが仲良しの頃、リャーメンシスターズからお金借りて立会外取引やってるんですよ。CB発行&貸株って形でね」
「ははあ、最近流行りの小さい会社が大金借りる手口だわ」
「そうです。で、まあ結局、プティテレビ側で防衛策としてヌッポン放送の新株引受権を大量発行」
「ポイズンピルね」
「栗えもんさん新株引受権を発行差止め訴訟に勝訴」
「株主の権利を保全した訳ね」
「プティテレビ、ハードジャンク・インベスターズに貸し株」
「西尻がホワイトナイト!」
「しかし、西尻不穏な動き」
「トロイの木馬!」
「その後、水上、栗えもん決裂。今に至るです」
「ほほう。それでさっきの社長の話しにつながる訳ね。テレビではそこまでやってなかったわ」
「ええ、ニュースではホワイトナイトまでで終わりでした」
「それで、リャーメンシスターズは?」
「栗えもんさんに貸した金利が高いんです」
「なんと!単純明快」
「世の中そんなもんです」
なんだか先が分かってしまうとつまらない。しかし、倫子は思い直した。良く考えてみれば、北極は未来を知っているのだ。

北極30えもん29

「第三話 激烈!M&A合戦」その4
「トゥルコーすなわち鶴原亀一郎は今や当代最高のアダルトコメンテーターに上り詰めたが、その一歩は容易ならぬものだった。今から25年余以前のことだ。プティテレビ金曜深夜帯バラエティー番組の司会から彼はスタートしたのだ。お笑い、お涙頂戴、芸能人の追っかけ、考えられるあらゆる企画をやっては失敗の繰り返し。ついに当時としては禁じ手と言われていたエログロコーナーを開始した。二十歳女性の処女率80%だった当時は成功しても失敗しても首は間違い無しだった筈だ。それが、驚異的な人気を呼んだ。驚くことに土曜の夜というのにゴールデンタイムの巨チン軍の試合並に視聴率が高かったのだ」
水上は当時を思い出すように宙に視線を泳がせた。彼の語りを西尻が引き継ぐように話し出した。
「われわれの世代は、まさにトゥルコー世代と言える。深夜帯とはいえ公共放送に、当時の日拓ロマンポルノ顔負けの内容を放送した彼はまさに革命児だったと言える。チェ・ゲバラは死に、学園紛争など遠い過去となった我々世代にとってトゥルコーこそが革命のカリスマだったのだ」
うーんん、多分、この二人は当時、中学生くらいだろうか。トゥルコーの番組を夜中に親の目を盗みながらこっそり見て、オナニー三昧だったに違いない、と倫子は思った。
「その皆さんの憧れのトゥルコーさんを栗えもんは狙っていると?」
「そう!そのとおり!さすが倫ちゃんすばらしい!」
ここまで執拗にトゥルコーの話をされれば普通それ以外考えられないだろ、と倫子は思った。それに何時の間にか「倫ちゃん」と馴れ馴れしく呼ばれていることの方が気になった。
「実はわれわれも狙ってたのだが、栗えもんに先を越されたのだ」
「え!?あ!そういえば社長ってしばらく前にヌッポン放送株を立会外取引で大量に買ってましたよね!」
「ううっ、気付いていたか」
「気付いていたかって、夕刊フニに載ってましたよ」
「ううっ、たしかに。あんな新聞誰も読まないかと思ってたのに」
「日本産業新聞にも載ってましたよ」
「ううっ、あの新聞こそ最終面の連載小説「愛のあーしたりこーしたり」しかみんな読まないもんだと思ってた」
「で、そんな卑怯な手口使っといて、何でこーなっちゃったんです?」
「卑怯とは失礼な!法の網の目をくぐったと言いなさいよ。まあそれはともかく、実は栗えもんも仲間だったんだ。われわれは三人でヌッポン放送をそしてプティテレビを買収するつもりだった。それをこいつが」
そう言って水上は西尻の顔を見た。
「え?ええ??僕ですか?僕?僕のせい?」
突如、西尻は取り乱した。
「ぼぼぼぼぼぼぼぼぼっぼぼぼ僕だけじゃないじゃないかー!水上さんだってーーーー!」
それを遮るように水上が口を開いた。
「先週、ここ六本木ピラーズのテナント組合の温泉旅行があった。ビルオーナーの杜ビルさん主催の旅行で、行き返りのバスから旅館の部屋まで綺麗どころのレースクイーンがマンツーマンで上から下まで接待してくれる最高のものだった。その席でこいつが調子に乗って」
「ぼぼぼぼぼぼぼぼぼぼぼぼぼぼ僕のせいだっていうんですかーーーー」
「風呂に入った時、こいつが栗えもんに向かって『やーい!皮被りー』と叫んだ」
「ぼぼぼぼぼぼぼぼぼぼぼぼぼぼぼ僕だけじゃじゃじゃじゃじゃ」
「接待用のレースクイーンが混浴で入っていたのだ。彼女たちに向かって『皮被りの好きな人ー!手を上げてーーー!!』こともあろうに挙手を求めた。結果は見ずとも明白!誰一人として挙手するどころか、蔑(さげす)むような笑いを浮かべたまま、全員が俯(うつむ)いた」
「ぼぼぼぼぼぼっぼっぼっぼっぼっぼっぼっぼっ」
「『はははっはは、栗えもんの皮被りーーー!』とこいつは叫んだ。その瞬間、三人の提携関係は崩れ去った。栗えもんは泣きながら風呂場から飛び出していったのだ」
「ぼぼぼぼおぼおぼおぼおぼぱぱぱぱぱぱぱっぱぱ」
「その結果がこれだ。栗えもんはわれわれに宣戦布告をしたのだ。全部、こいつのせいだ!」
「えーーん、えーーん、えーーん、えーーん」
西尻は泣き出した。
それにしても凄まじいほどに個人的な話だ。とても仕事の話とは思えない。
『ただの喧嘩なんだから、仲直りすればいいんじゃない?』
と倫子は思った。
「わが国の経済史を塗り替えるM&A闘争が始まったのだ!全面戦争だ!どちらかが死ぬまで戦う!」
水上は開戦を宣言した。
それに付き合わされる方は大変だぞおい、と倫子はうんざりした。

北極30えもん28

「第三話 激烈!M&A合戦」その3


民放キー局第6位はつまりビリっけつということだ。売上はビッグ3と言われる日の丸テレビ、テレビ夕日、TTVの十分の一にも及ばない。第5位のテレビ関東すら雲の上の存在だ。つまり、民放のお荷物。認可官庁の郵便電波省からは、何度もお取り潰しの沙汰を受けているが首の皮一枚のところで何とかすり抜けてきた、というのがプティテレビの現状だ。
放送内容といえば放送権が格安の古いB級映画や、他局がマスターテープを破棄しようとした古いテレビドラマの再放送がメイン。ニュースは一応、夕方は7:00、夜は11:30からやっているが、何故か他局のニュースが終了した時間帯。これについてプティテレビは「競争性を高める為、時間をずらし、より新鮮なニュースを視聴者に提供したい」と説明するが、もしかして他局のニュースを見てニュースを流してるのでは?という疑惑は囁かれている。実際、プティテレビのニュースはアナウンサーが棒読みするだけで、映像というものを見た事が無い。
そんなプティテレビが唯一ドル箱とするのが深夜時間帯のアドルト番組だ。素っ裸の女子アナによるニュース&お天気から始まり、現場ルポと称したラブホ突撃取材、「経済最前線」という特集では風俗店の店舗再建、更に新作AV紹介など、てんこ盛りのメニューだ。営業的にも街のキャバクラから全国展開中のデリヘル、高級ホストクラブ、風俗労働者御用達のラーメン屋まで豊富なスポンサーを抱えている。
そんな深夜帯の中でも最大、最強の視聴率を誇るのが「トゥルコーのオーバーナイトヌッポン」だ。鶴原亀一郎という風俗ジャーナリストが司会を務めるバラエティ番組で、深夜12:30から3:30まで放送。但し、毎月第一金曜日は「朝まで生出し放送」と題し5:30まで放送している。
当然のことながら全国のPTAほか教育団体から抗議や改善要求が絶えないが、地方局が無いことやプティテレビの13チャンネルが映らないテレビが売り出されていることから「まあ、真面目に相手にしても仕方ないか」というところで見逃されているのが実態だ。
「そんなプティテレビに敵対的買収まで仕掛けて栗えもんは何を考えてるんですか?ヌッポン放送を買収してアダルトビデオ権を獲得したところで私ならプティテレビなんか捨てちゃうな!」
倫子が首を捻(ひね)った。すると微笑みながら西尻と顔を見合わせ水上が、右手の人差し指を立てたかと思うと左右に小さく振り
チッチッチッチ
と舌を鳴らした。
「倫ちゃんは若いから分からないのだ。トゥルコーのオーバーナイトヌッポンは、われわれオーバーフォーティーン世代には青春の思い出なのだよ」
「青春の思い出?」
倫子が問い返すと、水上と西尻は手を握り合ってノスタルジーの世界に入り込んでいた。

北極30えもん27

「栗えもんは先週、ビデオ放送業界最大手のヌッポン放送株について、テンダーオファーすなわちTOBすなわち公開買付を開始したのは新聞、TV等で報道された通りだ。ヌッポン放送の持つアダルトビデオの著作権を支配下に置く事が狙いと言われている。何しろヌッポン放送はわが国アダルトビデオ業界の80%に及ぶ著作権を有する、いわばアダルトガリバーすなわちアダルトの巨人と呼べる存在なのだ。その利権は計り知れない」
西尻はそこまで言うと
「どうする水上?」
と水上進社長、すなわち倫子の会社の社長に判断を求めた。
「ここから先は私が説明しましょう」
水上社長はそういうと顔の前に両手を組み合わせ、それで口を覆い隠すようにした。これでは喋り難いではないかと倫子は思ったが、水上は当面喋る気はなさそうだった、むしろ深い思索に入ったように目を瞑(つむ)り、俯(うつむ)くように首を下に傾けた。そのまま眠ってしまったように動かなくなったところで、どこから聞こえてきたのだろう?と倫子が辺りを見回すほど、予想外のタイミングで水上の声が聞こえ始めた。
「栗えもんの目的はヌッポン放送ではない」
はじめ倫子は空耳かと思ったほどだ。水上は相変わらず目を閉じたままの上、内容も意外なものだった。
「栗えもんが狙っているのは本丸。すなわち」
そこで水上は言葉を区切った。次の言葉を思いっきり引っ張り、そして
「プティテレビ!」
と溜息と共に吐き出した。
「栗えもんはプティテレビを買収して何を企んでるんですか?」
水上の引っ張りを遮(さえぎ)るように、倫子は事務的に聞いた。
「あ?ああ、プティテレビ買収の狙いね。それは」
と言う水上を制するように西尻が横から口を出した。
「オーバーナイトヌッポンだ!トゥルコーのオーバーナイトヌッポン」
水上社長が続けた。
「あの伝説的エログロ番組!オーバーナイトヌッポン!」
倫子は、あんまり馬鹿馬鹿しい番組なので一度も見たことが無かった。
(つづく)

北極30えもん26

「第三話 激烈!M&A合戦」その1
「ちょっと、ちょっと北極!大丈夫?」
倫子はトイレの個室にいた。そして今だ小さなままの北極30えもんを手で持ち、身体を揺すってみた。
「うううーんん。あ!倫子様!済みません意識を失ってしまいました」
「アンドロイドでも意識を失いことあるのねえ」
「倫子様がおいきになられる時、あまりに強く締め付けられて、電流の流れが一時ストップしてしまったのです」
「まあ、でもそんなことでいちいち故障してたんじゃ駄目じゃない?」
「いいえ。倫子様の締め付けは規格外にございます」
「まあ!」
「もしやこの時代のバイブをお使いになっていた頃、いく際にバイブの回転が止まってしまったとか?」
「ああ、あれね。いく時ってウインウインがグイイイとかってモーターが止まる音するよね」
「いえ、それは倫子様が特別なのです。毎回毎回モーターが力づくで止められたら壊れてしまいます」
「ええ!?道理で!半年で壊れちゃうのよ。怪しいネットショップの通販で買ってるから不良品掴(つか)まされてたのかと思ってたわ!」
「いいえ。不良品などではございません。ちなみに私も首がもがれるかと思いました」
北極30えもんは首に手を当てて摩(さす)った。
「実は本体も損傷してきておりまして」
と言って股間も摩った。
そういえばこれまで付き合ってきた男どもは一様に早漏ばかりだった。三分もてばいい方で、酷(ひど)いのは入れた途端に
「もう、駄目~」
などと言っては引き抜いてダバ――ー。
「これでは人間の殿方も大変でございましょう」
たしかに。その上、倫子は長時間プレイが好きときている。バイブでオナニーする時は、三十分入れたり出したりするのが通例だ。
『これはーそのうち人間の男じゃ満足できなくなっちゃうかも』
と倫子は震え上がった。
「ところで北極、社長室に戻るけど、あなたも一緒に来てちょうだい。新しいスタッフって紹介するわ」
「承りましてございます」
倫子と北極30えもんは社長室に戻った。
「やあ、来た来た。さあ座って」
と社長が促した。不思議なのは北極30えもんについて何の質問もしない。
「あ、あの社長」
「彼のことだろ?OKだ。倫子ちゃんの見初(みそ)めた男なら文句は無いよ。ただし、当社は社員同士のセックスは禁止だよ」
「え!」
倫子は思わずうろたえた。社長はそんな倫子をじっと観察するように見ていた。
「もしかして、もうやっちゃった?っていうかやった男を連れてきたとか?」
「へ?いえいえいえいえいえいえいえいえいえいえいえいえいえ」
と倫子は否定し首をぶるぶる振るわせた。
「なんだか凄ーーーーーーーーーーく怪しいんだけど、今度のミッションの難易度を考えるとその位大目に見て上げないといけないかもしれない」
「たしかに。あまりに危険、あまりに過酷」
ハードジャンク・インベスターズの西尻も同意した。いったいどうしたと言うのだろう?バブル崩壊後の荒野のような日本経済にあって、無法地帯を我が物顔で闊歩し、弱者を踏み潰し強者に摺り寄り、裏切り・足の引っ張り合い当たり前、甘言と恫喝を駆使し、法の隙間の隙間、ニッチのニッチのニッチのニッチのにっちもさっちも行かないところから今日の繁栄を生み出してきたこの六本木ピラーズの雄二人が、これほど危険視するミッションとは?倫子は息を呑んだ。
「ごっくん。きゅるるるるるるるる」
さっき北極30えもんをアソコの中に収めたまま動き回ったせいか、腸が刺激されたらしい。お腹がきゅるきゅるなってしまった。
「おいおい大丈夫かい?話がこれからという時に」
「済みません。音だけです」
社長が白けたような顔をしたので、今度は西尻が口を開いた。
「倫子さん。いいかね。よく聞くんだ。今度のミッションは相手が悪過ぎる」
「相手?」
「そう!我々は勝てない喧嘩はしない、喧嘩は必ず弱者と、を心情としてきたが、今回ばかりはそうはいかない。金の鉱脈をみすみす逃す訳には行かないのだよ」
そう言うと西尻はコホンを一つ咳をした。
「しかし相手が相手なのだ」
そして西尻は社長を顔を合わせた。二人は小さく頷(うなず)きあった。
「その相手って誰なんですか?」
倫子の問いに、二人の男は容易に答えない。しばし沈黙が続き、深刻な上にも深刻な雰囲気が盛り上がったところで、社長が口を開いた。
「その相手とは栗えもん。バイブモアのCEO兼会長兼社長兼総帥だ。その牙城を突き崩すのは何人にも不可能」
「まさにミッション・インポッシブル」
西尻が後を続けた。
(つづく)
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